受験の物理屋さん

大学受験の参考書や問題集を紹介

大学電磁気学

[大学電磁気学]7.定常電流

投稿日:

 

定常電流を学んでいきます。

ここはそこまで難しくないのでさらっと行きましょう。

電磁気界で有名なオームの法則が出てきます。

 

 

定常電流

 

まずは電流の強さが時間に依存しない定常電流から考えましょう。

定常電流では次の関係が成り立ちます。

導線を流れる電流を \(I_1\) 、その電流が2つに分岐したあとを \(I_2, I_3\) とするとこれらが等しくなるというものです。

$$I_1 = I_2+I_3$$

 

片方の辺にまとめると

$$0 = -I_1+I_2+I_3 $$

このようにゼロが出てきます。

これを一般化すると

$$\sum_i I_i = 0$$

になります。

 

つまり枝分かれする前とした後の電流の和は一定です。

 

 

電流密度

電流の定義から電流密度というものを考えてみます。

電流の正体は電荷の流れです。

断面積が \(S\) の導体を通過する電荷 \(-e\) の速さを \(v\) とします。

また、導体の電流密度を \(n\) とすると電流は次のように表されます。

$$I = -envS$$

日本語で説明すると「単位時間当たりに断面積 \(S\) を通過する電子の数」が電流になります。

 

電流密度を \(i\) とするとこうなります。

$$i = -env$$

電流を断面積で割った値ですね。

 

ベクトル表記で表すと

$$\vec{i}(r) = -en\vec{v}(r)$$

です。

これからは電流密度が良く出てくるので覚えてください。

では、電流密度を使って、オームの法則を導いてみます。

 

 

 

オームの法則

 

オームの法則は有名ですね。

電流と抵抗の積が電位差になるという法則です。

$$I = \frac{\Delta \phi}{R}$$

\(I\) はもちろん電流です。 \(R\) は電気抵抗、 \(\Delta \phi\) は電位差です。

 

この電気抵抗は物質によって異なります。

物体の長さを \(l\) 、その物体の断面積を \(R\) 、物体の抵抗率を \(\rho\) とすると電気抵抗は

$$R = \rho\frac{l}{S}$$

となります。

電気抵抗は電気の通りにくさを示しますが、このままでは使いずらいこともあるので、その逆数を取った

$$\sigma = \frac{1}{\rho}$$

電気伝導度を使うことがあります。

ただ逆数を取ればよいだけなので簡単ですね。

 

この電気伝導度を使ってオームの法則を表してみましょう。

オームの法則は有名ですね。

$$I = \frac{\Delta \phi}{R}$$

抵抗率を使って書き換えて

$$I = \frac{\Delta \phi S}{\rho l}$$

電気伝導度を使って書き換えます

$$\frac{I}{S} = \sigma \frac{\Delta \phi}{l}$$

左辺に電流密度、右辺に電場が出てきます。

$$i = \sigma E$$

はい。こちらが電流密度と電場の関係を表したオームの法則になります。

 

電流密度と電場はベクトルですので、それらの向きは一致します。(一致しない結晶もありますが、今は気にしないで行きましょう。)

実はオームの法則は電場が弱い場所でしか成り立たない法則です。

 

 

 

電気伝導

 

先ほど出た電気伝導度を導き出してみます。

金属中を動いている伝導電子に電場 \(E\) を印加します。

そうすると電荷は \(-eE\) の力を受けます。

運動方程式は

$$m\frac{dv}{dt} = -eE$$

 

もし、電場以外の力が働いていないとすれば

$$v = -\frac{eE}{m}t$$

となります。

 

電流密度 \(i = env\) に代入すると

$$i = -\frac{ne^2E}{m}t$$

になります。

しかしこれでは時間に依存してしまい、永遠に電流密度が増加してしまいます。

もちろんそんなことは現実世界ではありえません。

実際の金属中には原子が存在し、電子はその原子に衝突するからです。

 

何秒間に一回衝突するかはわからないので計算ができません。そこで衝突ではなく、空気抵抗のような速度に依存する力を受けていると考えてみます。

そうすると運動方程式は

$$m\frac{dv}{dt} = -eE-av$$

\(a\) は比例係数です。

摩擦力と電場による力が釣り合うと電子は等速運動します。このとき加速度はゼロですので

$$v = -\frac{e}{a}E$$

これを電流密度の式に代入すると

$$i = \frac{ne^2}{a}E$$

となります。

実はこれもオームの法則と同じ形をしていますね。

つまり \(\frac{ne^2}{a}\) が電気伝導度に対応します。

 

\(a\) を \(m/\tau\) とおくと

$$\sigma = \frac{ne^2\tau}{m}$$

となります。

これが電気伝導度で、 \(\tau\) は時間と同じ次元の定数でして、「タウ」と読みます。

 

 

まとめ

 

今回は定常電流について学びました。

そこまで難しいわけではないのでぜひマスターしましょう。

 

-大学電磁気学
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

[大学電磁気学]2.ガウスの法則

  前回はこちら! [大学電磁気学]1.クーロンの法則   今回は静電場を学ぶうえで、最も重要な公式であるガウスの法則を学びます。   でもその前に電気力線を紹介します。 …

[大学電磁気学]15.電荷の保存則と変位電流

前回はこちら! 14.静磁場のエネルギーとインピーダンス       電荷保存則   回路に流れる電流が時間変化するとき磁場は次のように表されます。 $$\na …

[大学電磁気学]1.クーロンの法則

  これから大学で習う電磁気学を説明していきます。 高校ではコンデンサーの計算や、磁場中での導体棒が動く実験などが良く入試に出されていました。 大学ではマクスウェルの方程式と呼ばれる4つの式 …

[大学電磁気学]14.静磁場のエネルギーとインピーダンス

    今回は静磁場のエネルギーを説明していきます。   静磁場のエネルギー   コイルに電流を流す場合を考えてみましょう。 電流を増加させると自己誘電起電力が …

[大学電磁気学]11.アンペールの法則

  ここではアンペールの法則を学びます。 ビオサバールの法則と同様に磁場の大きさを求められる式ですが、直感的にわかりやすいのでアンペールの法則の方が人気です。     ア …