受験の物理屋さん

大学受験の参考書や問題集を紹介

大学電磁気学

[大学電磁気学]1.クーロンの法則

投稿日:2020年12月23日 更新日:

 

これから大学で習う電磁気学を説明していきます。

高校ではコンデンサーの計算や、磁場中での導体棒が動く実験などが良く入試に出されていました。

大学ではマクスウェルの方程式と呼ばれる4つの式がメインとなって出てきます。

高校までと違い、微分積分やベクトル解析の知識を必要とするので少し難しく感じるかもしれませんが、しっかり勉強してください!

 

 

電荷

 

世の中には電気が存在します。

電気には2種類あって、それぞれ正の電気、負の電気と呼ばれています。

これらが物体にあるとき、その物体は電荷をもっているといいます。

 

電荷を担うものは主に2種類あってマイナスの電気を担う電子とプラスの電気を担う陽子に分けられます。

ここまではよく知られていることですのでご存知でしょう。

 

 

話を続けます。

それら電子や陽子の電荷の量を電気素量といいます。

この電気素量は \(e\) で表され、その値は

$$e = 1.602\times 10^{-19}\mathrm{[C]}$$

です。単位は C で表し、クーロンと読みます。

このクーロンというのは人名で、電磁気学を作り上げた人物のひとりです。

では、そんなクーロンさんが実験で見つけ出した法則を見ていきましょう。

 

 

クーロンの法則

 

クーロンの法則はこちらです。

$$F = k\frac{qQ}{r^2}$$

\(q\)  と \(Q\) は電荷で、分母の r はその2点間の距離です。また、 k は比例定数です。

万有引力の式と似ていますね…

というか同じ形をしています。

ベクトル表記で書くならこんな感じです。

$$\vec{F} = kqQ\frac{\vec{r}-\vec{r}’}{|\vec{r}-\vec{r}’|^3}$$

 

力ですので単位は N (ニュートン)になります。

なお、かなり後に出てきますが、1Cは1A(アンペア)の電荷が1秒間に運ぶ電荷の量として定義されていますので覚えておいてください。

 

比例定数 k は真空の誘電率を使って

$$k = \frac{1}{4\pi\epsilon_0}$$

となります。

真空の誘電率とは電磁気学の後半で出てきますので、その時詳しく学びましょう。

ちなみに値は \(\epsilon_0 = 8.854\times10^{-12}\mathrm{C^2\cdot N^{-1}\cdot m^{-2}}\) です。

 

 

クーロンの式からわかることは2つの点電荷に働く力は、それぞれの電荷の大きさの積に比例し、距離に反比例するということです。

また、2つの電荷の符号が一致(プラス同士、もしくはマイナス同士)の時は斥力が働き、一致していないときには引力(引っ張り合う力)が働くことが分かります。

 

 

クーロンの法則の左辺に出てきた力はベクトルであり、足し合わせることができます。

式で表すとこのようになります。

$$F = F_1+F_2$$

これを重ね合わせの原理といいます。

 

 

静電場

 

クーロンの法則は力の法則でした。

今から説明する電場は場の話です。

一つの点電荷が、その周りに作る場(電場と呼びます。)は次のように表されます。

$$E = k\frac{q}{r^2}$$

先ほどのクーロンの法則から電荷 Q を取っただけです。

そのため

$$F = qE$$

が成り立ちます。

 

この \(E\) を電場といいます。

特に時間の関数でないとき(時間が変化しても電場は変化しないとき)を静電場と呼びます

これからしばらく静電場について取り扱っています。

なお、電場もベクトルでして、重ね合わせが成り立ちます。

式は

$$E(r) = E_1+E_2$$

です。

 

分布している場合

今までは点電荷を考えていましたがここからは空間に電荷が分布している場合を考えましょう。

空間の点 \(r\) を中心とした体積 \(\Delta V\) の領域を考え、その周りを電荷密度 \(\rho\) で分布しているとします。

このとき、電荷が \(r\) に作る電場は

$$E =k\times \rho(r_i)\Delta V\frac{\vec{r}-\vec{r_i}}{|\vec{r}-\vec{r_i}|^3}$$

となります。

すべて足し合わせます。

$$E =k\sum_i \frac{\vec{r}-\vec{r_i}}{|\vec{r}-\vec{r_i}|^3}\rho(r_i)\Delta V$$

(\(\sum_i \) は \(\sum_{i = 1}^{} \) と同じ意味です。)

これをより厳密に示すため積分形式で書いてみます。

\(\Delta V\)をゼロに限りなく近づけてみると

$$E =k\int \frac{\vec{r}-\vec{r}’}{|\vec{r}-\vec{r}’|^3}\rho(r’)dV’$$

となります。

 

電場はこのようにも表せるので導き出せるようにしましょう。

 

 

まとめ

 

今回は電磁気学のはじめということでクーロンの法則を中心に学びました。

このように微分積分の知識が必要になってくるのでわからなかった人は数学を先に勉強してください!

 

 

-大学電磁気学
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

[大学電磁気学]3.静電ポテンシャルとエネルギー

  静電ポテンシャルを考えます。     静電ポテンシャル   力学のときポテンシャルは力を積分すると出てきました。 電荷 \(q\) と電場 \(E\) をか …

[大学電磁気学]7.定常電流

  定常電流を学んでいきます。 ここはそこまで難しくないのでさらっと行きましょう。 電磁気界で有名なオームの法則が出てきます。     定常電流   まずは電流 …

[大学電磁気学]12.ファラデーの電磁誘導

    電磁誘導の法則を学んでいきます。 今までは静電場、静磁場について勉強しましたが、ここからは時間変化を伴うパターンを見ていきます。     電磁誘導 電磁 …

[大学電磁気学]8.静磁場

  ここからは磁場の話が出てきます。 磁気と電気は似ていますが、異なるところも多いので気を付けてください。   静磁場   空間に磁石を置くとその周りに磁場が発生します。 …

[大学電磁気学]13.自己インダクタンス

  今回は自己インダクタンス、相互インダクタンスについて説明していきます。     自己インダクタンス   閉じた回路に電流を流した時、周りに磁場が生じます。 …