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大学電磁気学

[大学電磁気学]6.コンデンサー

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大学受験で散々出てきたコンデンサーについて扱っていきましょう。

静電ポテンシャルから静電容量を計算していきます。

 

 

電気容量

 

半径 \(R\) の導体球に電荷が \(q\) があるとします。

このとき電場は

$$E = \frac{q}{4\pi \epsilon_0 R^2}$$

です。(ガウスの法則積分系を使用しました)

 

無限遠を基準とするとポテンシャルは

$$\phi = \frac{q}{4\pi \epsilon_0 R}$$

になります。

半径を一定とすると、電荷とポテンシャルの関係は比例関係にあるので比例定数を \(C\) とすると

$$q = C\phi$$

となります。

このとき \(C\) を電気容量といいます。

もちろん \(C\) は

$$C = 4\pi \epsilon_0 R$$

です。

 

静電エネルギー

次に静電エネルギーを見ていきます。

導体に電荷があるとき、その導体は静電エネルギーを持ちます。

静電エネルギーの式はこちらでした。

$$U = \frac{1}{2}q\phi$$

電気容量を使って表すと

$$U = \frac{1}{2}C\phi^2 = \frac{1}{2C}q^2$$

です。

 

 

コンデンサー

 

導体が2つあり、\(\pm q\) の電荷を与えます。

これら2つの導体を近づけた時、下図のように電荷が引き合い、表面に集まります。

このようにして作られた装置をコンデンサーと呼び、電荷の蓄積やノイズを取り除く目的として、集積回路によく使われます。

 

左側の導体の電荷とポテンシャルをそれぞれ \(q_1, \phi_1\) として、右側を \(q_2, \phi_2\) とします。

そうすると電荷は

$$q_1 = C_{11}\phi_1+C_{12}\phi_2$$

$$q_2 = C_{21}\phi_1+C_{22}\phi_2$$

になります。

\(C_{12}\) は導体1の電荷が導体2のポテンシャルに比例するときの比例定数です。式で表すと

$$q_1 = C_{12}\phi_2$$

です。また、逆も成り立ちます。

$$q_2 = C_{21}\phi_1$$

 

いまでてきた \(C_{12}, C_{21}\) は一般的に次のような関係があります。

$$C_{12} = C_{21}$$

これを電気容量係数の相反定理と呼びます。

 

 

さてさてコンデンサーの電気容量を計算してみましょう。

まずはこの2つの式

$$q_1 = C_{11}\phi_1+C_{12}\phi_2$$

$$q_2 = C_{21}\phi_1+C_{22}\phi_2$$

からポテンシャルを左辺に持っていきます。

$$\phi_1 = \frac{q_1-C_{12}\phi_2}{C_{11}}$$

$$\phi_2 = \frac{q_2-C_{21}\phi_1}{C_{22}}$$

代入して

$$\phi_1 = \frac{q_1-C_{12}\frac{q_2-C_{21}\phi_1}{C_{22}}}{C_{11}}$$

計算します。

$$\phi_1 = \frac{q_1C_{22}-C_{12}q_2-C_{12}C_{21}\phi_1}{C_{11}C_{22}}$$

 

$$\phi_1(C_{11}C_{22}) = q_1C_{22}-C_{12}q_2+C_{12}C_{21}\phi_1$$

$$\phi_1(C_{11}C_{22})-C_{12}C_{21}\phi_1 = q_1C_{22}-C_{12}q_2$$

$$\phi_1 =\frac{q_1C_{22}-C_{12}q_2}{C_{11}C_{22}-C_{12}C_{21}}$$

 

これを \(\phi_2\) についても同様に導き出していきます。

そうすると

$$\phi_2 =\frac{q_2C_{11}-q_1C_{21}}{C_{11}C_{22}-C_{12}C_{21}}$$

となります。

相反定理より、

$$\phi_1 =\frac{q_1C_{22}-q_2C_{12}}{C_{11}C_{22}-C_{12}^2}$$

$$\phi_2 =\frac{q_2C_{11}-q_1C_{21}}{C_{11}C_{22}-C_{12}^2}$$

導体1の電荷を \(+q\), 導体2の電荷を \(-q\) とすると

$$\phi_1 =\frac{C_{22}+C_{12}}{C_{11}C_{22}-C_{12}^2}q$$

$$\phi_2 =-\frac{C_{11}+C_{21}}{C_{11}C_{22}-C_{12}^2}q$$

$$\Delta \phi = \phi_1-\phi_2 = \frac{C_{11}+C_{21}+2C_{12}}{C_{11}C_{22}-C_{12}^2}q$$

このとき、係数の逆数を \(C\) とおくと

$$C = \frac{C_{11}C_{22}-C_{12}^2}{C_{11}+C_{21}+2C_{12}}$$

つまり

$$q = C\Delta \phi$$

です。この \(C\) が電気容量です。

(少し長かったのですが計算自体は難しくなかったと思います。)

 

まとめ

 

今回はコンデンサーについて見ていきました。

入試によく出た回路の問題等はあまり見かけません。

ポテンシャル等の地道な計算をしっかりしましょう!

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