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5-4.原子核と放射線

投稿日:2020年11月28日 更新日:

ここでは放射線について勉強しましょう。

放射線は化学の範囲に思えますが、実は物理においても非常に重要です。

 

前回はこちら!5-3.ボーアの原子模型

 

 

原子核

 

原子は一般に原子核と電子から成り立ちます。

その原子核は陽子と中性子から成り立ちます。

ここまでは中学生の理科でも習っているので大丈夫でしょう。

なお、陽子と中性子のことを核子と呼び、核子と核子を結びつける力を核力といいます。

 

原子の大きさは約 \(10^{-10}\)m ですので、とても小さいです。もちろん質量はとても軽いです。

そんな質量の単位には統一原子質量単位が用いられ、記号uで表されます。

uは質量数12の炭素元素の12分の1と決まっており、その値は

$$1u = 1.66\times 10^{-27}\mathrm{[kg]}$$

です。

 

 

原子核の放射性崩壊

 

不安定な状態の原子核は放射線と呼ばれるものを放出して、安定な状態になろうとします。

これを放射性崩壊と呼び、物質が自然に放射線を放出する性質を放射能といいます。

 

入試によく出てくる放射線の種類は3つです。順番に見ていきましょう。

 

1つ目は α 線です。(アルファです。)

α 線の正体はヘリウムの原子核です。不安定な原子核からヘリウムの原子核がでていくことを α 崩壊と呼びます。

ヘリウムの原子核は陽子数が2、原子量が4ですので、α 崩壊した原子核は原子番号が2、質量数が4減少します。

こんな感じです。

$$\mathrm{{}^{238}_{92}U  -> {}^{234}_{90}Th + {}^{4}_{2}He}$$

 

 

2つ目は β 線です。(ベータです。)

β 線の正体は電子です。

中性子が多い原子核では、中性子が崩壊して、陽子と電子に分かれます。これを β 崩壊と呼びます。

β 崩壊が起きると、原子番号が一つ上がり、さらには電子が飛び出ます。

ちなみに質量数は変わりません。

$$\mathrm{{}^{40}_{19}K  -> {}^{40}_{20}Ca + {e}^{-}}$$

 

 

3つ目は γ 線です。(ガンマです。)

ガンマ線の正体は波長の短い電磁波です。

α 崩壊や β 崩壊がが起きた後に取り残された余分なエネルギーがガンマ線として放出されます。これを γ 崩壊と呼びます。

γ 崩壊では質量数、原子番号ともに変化がないです。

 

 

半減期

 

原子核の崩壊は時間とともに一定の割合で減少します。

これが半分になるまでの時間を半減期と呼びます。

崩壊する前の最初に存在した原子核の数を \(N_0\) 、半減期を \(T\) 、経過時間を \(t\) とすると、崩壊せずに残っている原子核の数は次のように表せます。

$$N  = N_0(\frac{1}{2})^{\frac{t}{T}}$$

半減期は核種によって決まっています。

短いものでは数秒、長いものでは何万年もの長さがあります。

 

半減期の問題はよく見かけますが、公式はこれしかないので、得点源になるでしょう。

この式で求められるのは崩壊した数ではなく、崩壊せずに残っている原子核の数ですので、間違えないようにしてください!

 

 

まとめ

 

今回は放射線について見ていきました。

危険なイメージがあるかもしれませんが、レントゲン写真を撮るときにも使われていますし、がんの治療にも役立ちます。

このページに書かれていることは高校物理で扱う内容のみですので、放射線に興味が出た人は是非自分で学んでみてください!

 

次回はこちら!5-5.質量欠損・核反応

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