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5-5.質量欠損・核反応

投稿日:2020年12月3日 更新日:

今回は質量欠損について取り扱っていきます。

 

前回はこちら!5-4.原子核と放射線

 

 

質量欠損

質量欠損

陽子2個と中性子2個からなるヘリウム \({}^4_2He\) があるとします。

陽子の質量を \(m_p\)、中性子の質量を \(m_n\) とした時に原子核全体の質量 \(M\) は

$$M = 2m_p + 2m_n$$

とはなりません。

 

実は陽子と中性子の質量の合計より、 \(\Delta M\) ほど軽くなります。

これを質量欠損といいます。

では、その差 \(\Delta M\) はどのくらいなのかといいますと

$$\Delta M = 2m_p + 2m_n-M$$

で表されます。

 

一般化しましょうか。

原子番号 \(Z\) 、質量数 \(A\) の原子核の質量を \(M\) としたとき、質量の差は

$$\Delta M = Zm_p + (A-Z)m_n-M$$

で表されます。

 

結合エネルギー

さきほどの質量欠損はあの有名な式に関係しています。

アインシュタインが提唱した質量とエネルギーが等価であることを表した式

$$E = mc^2$$

があることはご存知でしょうか。

こちらの式と関係があります。

 

原子核がバラバラなときとくっついているときのエネルギーの差を \(\Delta E\) とすると、

$$\Delta E = \Delta mc^2$$

となります。

ここにでてきた \(\Delta M\) が質量欠損に当たります。

なお、このエネルギーの差 \(\Delta E\) を結合エネルギーと呼びます。

 

 

核反応

 

ある原子核に大きなエネルギーを持った別の原子核が衝突すると核子(原子核)の入れ替えが起こり、さらには核種(原子の種類)が変化することがあります。

これを核反応といいます。

また、核反応によって、放出、吸収されるエネルギーのことを核エネルギーといいます。

 

このエネルギーの単位にはよく MeV が使われます。

MeV はメブと呼ぶのが一般的(?)です。

ただしくは「メガエレクトロンボルト」のことで、メガは \(10^6\) を示すことで知られています。

エレクトロンボルトとは1ボルトの電圧を1つの電子に印加したとき、その電子が持つエネルギーのことを表しています。

(ややこしいですが原子の分野ではよく使われます。)

この定義は覚えてください。

 

 

核分裂と核融合

 

最後に核反応を見ましょう。

まず、核分裂とはその名の通り、1つの原子核が、複数の原子核に分裂する反応のことを言います。

 

質量数の小さな原子核どうしが結合すると、エネルギーが放出されます。この現象を核融合といいます。

 

まとめ

 

今回は質量欠損や結合エネルギーについて見ていきました。

次回素粒子について学びますが、入試にはほとんど出ません。

今回までの内容を復習し、問題をたくさん解いてください!

 

次回はこちら!5-6.素粒子

 

 

 

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