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高校原子

5-1.電子と光電効果

投稿日:2020年11月8日 更新日:

前回はこちら! 4-9交流・RLC回路

 

 

今回から高校物理の最後の分野である原子分野に入ります。

1900年前後に物理学は大きく発展しました。

それがどのように発展していったのかをこの原子分野を通して学んでいきます。

 

原子分野には実験が多いです。

結果のみならずどのように式を導き出すのかを理解しながら進めましょう!

 

 

用語集

 

用語 説明 用語 説明
比電荷 電子の大きさと質量の比。その値は\(e/m=1.7588\times 10^11\)C/kg 光量子仮説 光を粒子とした仮説。光のエネルギーがプランク定数と振動数で表せることを示した。
電気素量 電子一個の電気量の大きさ 仕事関数 金属の内部にある電子を表面から飛び出させるために必要な仕事
光電効果 光のエネルギーによって電子が飛び出す現象のこと

 

少し量が多いのですがしっかりと覚えましょう!

 

 

J.J.トムソンの実験

 

イングランドのJ.J.トムソンが1897年に陰極線の粒子の電気量の大きさ \(e\) と質量 \(m\) との比を測定しました。

陰極線とは真空管の中で観測される電子の流れのことです。

ちなみに真空管の陽極(プラス側)に曲がることから電子はマイナスの電荷をもつと考えられた経緯があります。

 

この荷電粒子の電気量の大きさと質量の比を比電荷といいます。

その値は

$$\frac{e}{m}=1.7588\times 10^{11} [C/kg]$$

です。

比電荷の測定の実験は入試問題に出ることもあります。

 

 

ミリカンの実験

 

アメリカのミリカンが油滴を用いた方法で実験を行い、電気素量を求めることに成功しました。

電気素量とは電子一個の電気量の大きさに等しく、その値は

$$e=1.602\times 10^{-19} [C]$$

で表されます。

 

ミリカンの実験とJ.J.トムソンの実験から電子の質量を求められます。

電子の質量は

$$m=\frac{e}{e/m}=9.11\times 10^{-31}[kg]$$

です。

 

 

光電効果

 

光電効果とは光のエネルギーによって電子が飛び出す現象のことです。

この時に飛び出す電子のことを光電子といいます。

 

光電効果にはいくつかの特徴があります。

  1. 光の振動数がある値(限界振動数)よりも小さければ高電子は飛び出さない
  2. 光電子の運動エネルギーの最大値は光の強さに関係なく振動数によって決まる。
  3. 飛び出す光電子の数は光の強さに比例して増える(ただし限界振動数を下回るときは光電子が飛び出さない)

などです。

 

光電効果は実験からわかったものです。

 

 

下図の丸い物体を光電管と呼びます。

光電管の電極の両端に電圧を印加し、陰極(右側の丸い方)に光を当てると、陰極から光電子(電子)が飛び出します。

その光電子が左側の陽極に達したときに電流が流れます。

その際、光の強さや振動数、電圧などを変えて測定しました。

 

光の強さを変えた時にどのような反応が起きるのかを見ていきましょう。

下の図のように光電流の強さ I が大きくなります。

ただし、電子の振動数は同じ場合を考えているので、きまった電圧 \(-V_M\) に達しないと、電流は流れません。

 

 

もうひとつのパターンを見ていきましょう

光の振動数を大きくした場合です。

\(\nu_2>\nu_1\) とすると、グラフの形は変わりませんが、\(I=0\) となる電圧は変わります。

 

 

光量子仮説

 

アインシュタインがノーベル賞受賞したきっかけの光量子仮説とは光電効果の説明になります。

光子一個が持つエネルギーは以下のようになります。

$$E=h\nu=\frac{hc}{\lambda}$$

\(\nu,\lambda\) 光子の振動数、波長

\(c\) 真空中の光の速度

\(h\) はプランク定数と呼ばれます。

プランク定数の値は\(h=6.63\times 10^{34}\)です。

光電効果の説明は仕事関数がかかわってきます。これについては次で説明します。

 

 

仕事関数

 

金属の内部にある電子を表面から飛び出させるために必要な仕事を仕事関数と呼びます。

仕事関数の単位は仕事と同じ、ジュールになります。

 

光電子の運動エネルギーの最大値 \(K_M\) は仕事関数を W とすると、

$$K_M=h\nu-W$$

で表されます。日本語で説明しますと

光電子の運動エネルギーの最大値 = 光電子がもっているエネルギー - 電子が飛び出すのに必要なエネルギー

です。

 

なお、仕事関数の大きさは金属によって異なります。

そのオーダーは\(10^{-19}\) です。

とても小さいですね。

 

 

まとめ

 

今回は原子分野の一番始めである、電子と光について勉強しました。

覚えることが増えるので決して焦らず進めてください!

 

次回はこちら! 5-2.X線~粒子性と波動性の二重性

 

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