ここでは放射線について勉強しましょう。
放射線は化学の範囲に思えますが、実は物理においても非常に重要です。
前回はこちら!5-3.ボーアの原子模型
原子核
原子は一般に原子核と電子から成り立ちます。
その原子核は陽子と中性子から成り立ちます。
ここまでは中学生の理科でも習っているので大丈夫でしょう。
なお、陽子と中性子のことを核子と呼び、核子と核子を結びつける力を核力といいます。
原子の大きさは約 \(10^{-10}\)m ですので、とても小さいです。もちろん質量はとても軽いです。
そんな質量の単位には統一原子質量単位が用いられ、記号uで表されます。
uは質量数12の炭素元素の12分の1と決まっており、その値は
$$1u = 1.66\times 10^{-27}\mathrm{[kg]}$$
です。
原子核の放射性崩壊
不安定な状態の原子核は放射線と呼ばれるものを放出して、安定な状態になろうとします。
これを放射性崩壊と呼び、物質が自然に放射線を放出する性質を放射能といいます。
入試によく出てくる放射線の種類は3つです。順番に見ていきましょう。
1つ目は α 線です。(アルファです。)
α 線の正体はヘリウムの原子核です。不安定な原子核からヘリウムの原子核がでていくことを α 崩壊と呼びます。
ヘリウムの原子核は陽子数が2、原子量が4ですので、α 崩壊した原子核は原子番号が2、質量数が4減少します。
こんな感じです。
$$\mathrm{{}^{238}_{92}U -> {}^{234}_{90}Th + {}^{4}_{2}He}$$
2つ目は β 線です。(ベータです。)
β 線の正体は電子です。
中性子が多い原子核では、中性子が崩壊して、陽子と電子に分かれます。これを β 崩壊と呼びます。
β 崩壊が起きると、原子番号が一つ上がり、さらには電子が飛び出ます。
ちなみに質量数は変わりません。
$$\mathrm{{}^{40}_{19}K -> {}^{40}_{20}Ca + {e}^{-}}$$
3つ目は γ 線です。(ガンマです。)
ガンマ線の正体は波長の短い電磁波です。
α 崩壊や β 崩壊がが起きた後に取り残された余分なエネルギーがガンマ線として放出されます。これを γ 崩壊と呼びます。
γ 崩壊では質量数、原子番号ともに変化がないです。
半減期
原子核の崩壊は時間とともに一定の割合で減少します。
これが半分になるまでの時間を半減期と呼びます。
崩壊する前の最初に存在した原子核の数を \(N_0\) 、半減期を \(T\) 、経過時間を \(t\) とすると、崩壊せずに残っている原子核の数は次のように表せます。
$$N = N_0(\frac{1}{2})^{\frac{t}{T}}$$
半減期は核種によって決まっています。
短いものでは数秒、長いものでは何万年もの長さがあります。
半減期の問題はよく見かけますが、公式はこれしかないので、得点源になるでしょう。
この式で求められるのは崩壊した数ではなく、崩壊せずに残っている原子核の数ですので、間違えないようにしてください!
まとめ
今回は放射線について見ていきました。
危険なイメージがあるかもしれませんが、レントゲン写真を撮るときにも使われていますし、がんの治療にも役立ちます。
このページに書かれていることは高校物理で扱う内容のみですので、放射線に興味が出た人は是非自分で学んでみてください!
次回はこちら!5-5.質量欠損・核反応