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大学電磁気学

[大学電磁気学]10.磁気双極子

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磁気双極子を学びます。

 

磁気双極子

 

ABに流れる電流素子の位置ベクトル \(r’\) は

 

ABに流れている電流素子が点 \(r\) 作り出す磁場は次のように表せます。

$$\frac{\mu_0Ia}{4\pi}\frac{\vec{e_y}\times \vec{r}-(a/2)\vec{e_x}}{|\vec{r}-(a/2)\vec{e_x}|^3}$$

このままでは分母の計算ができないので、工夫をします。

途中で近似計算が出てきます。

$$\begin{align}|\vec{r}-(a/2)e_x|^2 &= {(|\vec{r}-(a/2)e_x|^2)}^{-\frac{3}{2}} \\ &= {((\vec{r}-(a/2)e_x)\cdot (\vec{r}-(a/2)e_x))}^{-\frac{3}{2}} \\ &\approx {(r^2-a(\vec{r}\cdot \vec{e_x})}^{-\frac{3}{2}} \\ &= \frac{1}{r^3}{(1-\frac{a(\vec{r}\cdot \vec{e_x})}{r^2})}^{-\frac{3}{2}}  \\ &\approx \frac{1}{r^3}(1-\frac{3a(\vec{r}\cdot \vec{e_x})}{2r^2}) \end{align}$$

 

はい。ややめんどくさいですが計算し終わりました。

これをBC, CD, DAに流れる電流素子作り出す磁場の大きさも同様に求められます。

全部を足し合わせると

$$\vec{e_y}\times (\vec{r}-\frac{a}{2}e_x)(1+\frac{3a}{2}\frac{\vec{r}\cdot \vec{e_x}}{r^2})-\vec{e_x}\times (\vec{r}-\frac{a}{2}e_y)(1+\frac{3a}{2}\frac{\vec{r}\cdot \vec{e_y}}{r^2}) \\ -\vec{e_y}\times (\vec{r}-\frac{a}{2}e_x)(1+\frac{3a}{2}\frac{\vec{r}\cdot \vec{e_x}}{r^2})+\vec{e_x}\times (\vec{r}-\frac{a}{2}e_y)(1+\frac{3a}{2}\frac{\vec{r}\cdot \vec{e_y}}{r^2})$$

$$\approx 2a(e_x\times e_y)+\frac{3a}{r^2}(\vec{r}\cdot \vec{e_x})\vec{e_y}-(\vec{r}\cdot \vec{e_y})\vec{e_x}\times \vec{r}$$

ここでベクトル三重積の公式を思い出してください。確かこんなやつでした。

$$(\vec{a}\times \vec{b})\times \vec{c} = (\vec{a}\cdot \vec{c})\vec{b}-(\vec{b}\cdot \vec{c})\vec{a}$$

これを使うと

$$\approx 2a(e_x\times e_y)+\frac{3a}{r^2}((\vec{e_x}\times \vec{e_y})\times \vec{r})\times \vec{r}$$

()の中身を計算すると

$$=2a(e_x\times e_y)+\frac{3a}{r^2}((\vec{e_x}\cdot \vec{e_y})\vec{r})-\vec{n}r^2$$

$$=-a\vec{n}+\frac{3a}{r^2}(\vec{n}\cdot \vec{r})\vec{r}$$

したがって

$$B=-\frac{\mu_0Ia^2}{4\pi r^2}(\vec{n}+\frac{3a}{r^2}(\vec{n}\cdot \vec{r})\vec{r})$$

となります。

 

長かったですがこれで区切りが付きました。

 

 

偶力のモーメント

 

磁場中に置いた小さな回転電流(導線を円にしてそこに電流を流す)に働く偶力のモーメントは

$$N = IS\vec{n}\times\vec{B}$$

です。

ここでベクトル \(m\) を次のように定義します。

$$m = \mu_0ISn$$

そうすると磁場は

$$B=-\frac{1}{4\pi r^2}(\vec{m}+\frac{3a}{r^2}(\vec{m}\cdot \vec{r})\vec{r})$$

これを磁場の強さ \(H\) によって書き換えると

$$N=m\times H$$

となります。ここででてきた \(m\) は電場における電気双極子と同じ形をしています。

なので \(m\) を磁気双極子と呼びます。

 

 

まとめ

 

今回は磁気双極子について学びました。

 

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