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今回はエネルギーについてです。
力学でも熱でもどの分野でも出てくるのでなれているかと思いますが、電磁場の場合も計算量が多いので少しずつ進めてください。
電磁場のエネルギー・ポインティングベクトル
マクスウェルの方程式から電磁場のエネルギーを考えてみましょう。
$$\nabla \times H-\frac{\partial D}{\partial t} = i\tag{1}$$
$$\nabla \times E+\frac{\partial B}{\partial t} = 0\tag{2}$$
こちらはもうすぐに出てくるようになりましたか?
(1) の両辺に電場 \(E\) のスカラー積を、(2) の両辺に磁場 \(H\) とのスカラー積を考えると次のようになります。
$$E\cdot (\nabla \times H-\frac{\partial D}{\partial t} )= E\cdot i\tag{3}$$
$$H\cdot (\nabla \times E+\frac{\partial B}{\partial t} )= 0\tag{4}$$
これの両辺の差を取ります。
$$(E\cdot \nabla \times H +H\cdot \nabla \times E) +(E \cdot \frac{\partial D}{\partial t}+ H \cdot \frac{\partial B}{\partial t} ) = -E\cdot i\tag{5}$$
少し変形すると
$$(E\cdot \nabla \times H +H\cdot \nabla \times E) +\frac{\partial D}{\partial t}(\frac{1}{2} E \cdot D+\frac{1}{2} H \cdot B) = -E\cdot i\tag{6}$$
となります。この2項目の変形はよく出てくるので覚えてください。
わからない人は(6)から(5)へ展開してみてください。逆から考えると簡単のはずです。
後の項はこの公式
$$\nabla (E\times H)=H(\nabla \times E)-E (H\times \nabla) \tag{7}$$
を使用するとスッキリとまとまります。この公式は電磁気でよく出てきますが、線形代数で出てきた式ですね。
$$\nabla \cdot(E\times H) +\frac{\partial }{\partial t}(\frac{1}{2} E \cdot D+\frac{1}{2} H \cdot B) = -E\cdot i\tag{8}$$
左辺の括弧内が長いので \(u\) とすると
$$\nabla \cdot(E\times H) +\frac{\partial u}{\partial t} = -E\cdot i\tag{8}$$
のように表されます。
さらに外戚の部分を \(S= (E\times H) \) として表現するともっとシンプルに表せます。
$$\nabla S +\frac{\partial u}{\partial t} = -E\cdot i\tag{8}$$
このときの S をポインティングベクトルと呼びます。
電場と磁場のどちらにも垂直な向きで電磁エネルギーの流れを表しています。
ポインティングの説明をおこなうために、導線を一様な電場内におき、電流が流れたいう場面を考えてみましょう。
このときのポインティングベクトルは次の計算で表せます。
$$\begin{align}S(r) &= |\vec{E} \times \vec{H(r)}| \\ &= EH(r) \\ &= \frac{EB}{\mu_0} \\ &= \frac{EI}{2\pi r}\end{align}$$
この量のエネルギーが流れていることがわかります。
ここから、エネルギーが導線にある電子の運動エネルギーになり、その後ジュール熱に変わります。
まとめ
今回は電磁場のエネルギーについて取り扱いました。
特にポインティングベクトルはわかりにくい概念ですが、しっかりと理解しましょう。